「今日の恋のダイヤ」

あまりにも『今週の お題』ネタばっかばっかもどうなのよという訳で、
久々の「これヒットすればいいのに!」的な漫画をご紹介。

今日の恋のダイヤ (花とゆめCOMICS)

今日の恋のダイヤ (花とゆめCOMICS)

草川為は、「LaLa」の中ではベテランと形容して差し支えないキャリアの持ち主で、
連載は長めに続くがなかなかブレイクも来ないという
見えない壁に阻まれてる雰囲気の作家さんだ。
今のところ、一番長い連載は「龍の恋わずらい」かな。(全7巻)
ヒロイン、シャクヤをめぐってルシン・クワンというタイプの違う男性の鞘当てで
カップリング論争大好きな女の子のハートにそれなりにツボった印象がある。
当時の風潮が「桜蘭高校ホスト部」に代表される、逆ハーレム=キャラは質より量を重視!だったせいか、
お話として面白いのに、低空飛行で終わってしまった。
侍女のルピナとか良い設定だったのになぁ。
あと子虎のルーとクーが可愛かった。ぶっちゃけ夏目友人帳ニャンコ先生とタメ張れた。


さて、思い出話はこのへんにして、「今日の恋のダイヤ」の話。
国内線の空港を舞台に、4人の女性たちが繰り広げるオムニバス・ストーリーだ。
と言っても、この4人はお互いに見ず知らずで、名前も知らず二度と会うこともない。
袖触れ合う程度の少々の縁、な関係だ。
具体的には
*第一話のヒロインのショルダーバッグを取り違えた女性が第二話のヒロイン
*第二話のヒロインの告白を隣のテーブルで聞いていた女性が第三話のヒロイン
*第三話のヒロインがパウダールームで鏡に向かってサムズアップしている時に入ってきたのが第四話のヒロイン
*第四話のヒロインが落としたギミック付きお手製ポーチを、売店のおばさんに「貴方のでしょ」と押しつけられかかったのが第一話のヒロイン
いやぁ、キレイにハマっておりますな。なんというサークル・オブ・ガールズライフ。


タイトルに「恋」が入っているだけあって、どの女性も恋愛に対する悩みを抱いている。
自分の姉との結婚が決まっている同僚への秘めるしかない恋、
社長の息子へのライバルだらけの片思い、
地元に帰ってしまった彼との遠距離恋愛
これまでの自分とこれからの生活に自信がなく始まりそうな恋に積極的になれない、など。
そして彼女たちは、袖触れ合った程度の他人の彼女たちから、自分へのエールにも似たなにかを受け取る。


勇気を(第四話⇒第一話)
自分への許しを(第一話⇒第二話)
はじめの気持ちを(第二話⇒第三話)

そして第四話のヒロインは、第三話のヒロインから
「もしかしたら誰かが、貴方からも受け取ってるかもね」と言われ
その後、第一話のヒロインが自作ポーチを褒めたことを聞かされ、いつもの自分への自信を取り戻す。
――そして彼女達、それぞれの思いを胸に、空港を後にしてゆくのだ。


作者のブログによると、最初から全4話ということで考えた話だそうだが
そう言われてここまでウェルメイドに話を構成できる作家さんはそうそうおりませんがな。
ドラマの脚本家とか是非参考にするがいいよ!
てか、このままドラマ化しちまえよ、北海道&香川の路線持ってる航空会社とタイアップして!


このように、お話方面で優れた技量を誇る漫画家さんだが
作画の方もすばらしい。
少ない線であっさりとした描写なので、パッと見わかりづらいかもしれないが、
こだわりの末に引かれた線なのだ。
たとえば足のラインなら、一筆書きのようにサッと引いた線で
その人物の重心の位置や、膝関節の曲がり方まで判るようになっている。
Sinpleではなく、Sophisticatedなのだ。
こうした感覚で構成された画面は、見ていて気持ちがいいし、
おそらくコスパも悪くないのだろう。
長年書き続けてこられた秘訣はこのあたりにもあるのかも。


とまぁ、褒めちぎってみた訳だが、実際、久々のヒットだった。
新しい白泉社のコミックスの装丁でも、ピカイチの魅力的なデザインだ。
是非売れていただきたい。