めめめのくらげ、鑑賞記

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村上隆初監督作品「めめめのくらげ」をGW中に鑑賞してまいりました。
どうも世間での評判が思わしくないを通り越してスルーっぽいので、
そこまで冷淡に扱われる作品とも思えず。ブログでよっこらしょしてみる次第。
そもそも、初音ミクの初・映画主題歌なのにあまりに無視しすぎじゃねーの、お前等。


PVで見られるストーリーは、約30%といったところ。
「ふれんど」は、主人公が転校した先の私立小学校なら、誰でも持っている生き物(?)で
スマートフォンに似たデバイスで召喚可能。大きさや姿形、機能もさまざま。
「絶対裏切らない友達」らしい。
いつの間にか子供達、特に男子の間では、このふれんどを戦わせて優劣を競うブームが起きており
引っ越しの荷物に紛れ込んでいた「くらげ坊」=デバイスのないふれんどを連れている主人公が
これに巻き込まれたところを、強いフレンドを持つが「けんかは嫌い」なヒロインに助けられる。
体育の授業のプールで、スク水ヒロインとリア充ライフを満喫したのもつかの間の間
昨日の仕返しにあった主人公はぶん殴られて昏倒し、くらげ坊も奪われてしまう。
一方、子供達にデバイスを配った謎の集団〜厨二黒マント四人衆〜は主人公に目をつけており、
彼らと共同研究している主人公の叔父を巻き込んで、話は二転三転、
黒マントが実現に成功した巨大なモンスターを巡って団結した子供達は力を合わせるのだが
巨大モンスターを倒すことは、そのままふれんどの消滅を意味しており……。


見終わった第一印象としては「デジモンリスペクトだな」「想像したよりずっと話の展開が辻褄が合ってる」ということだった。
後半のプールからラストまでが同じ一日、しかも夕方ですらないところを見ると
一時間目から放課後までの間だということがやや無理があるが、目につくのはそれぐらいだ。
そのために絵面が犠牲にされていることもない。
監督が撮りたかったであろうもの〜一面の緑の中の通学路、夜店のような大学構内、神社でのふれんどタッグマッチ〜も
きちんと話の中に織り込まれている。
村上隆にとっては黒歴史であろうMiss Ko2までふれんどとして登場させるのには恐れ入ったが
(Ko2=ボークスに発注した等身大のアニメ顔メイドフィギュアのこと)
しかし、この設定がこれまた違和感ないんだわ。
ちなみにふれんどの中で日本語しゃべれるのはこの子だけ。声は桑島法子です。
その他、市街地を進んでくる巨大モンスターや、ヒロインのスク水などは言うまでもない。


だからといって、口当たりのいい題材ばかりではない。
ヒロインの母親は新興宗教に入れあげていてヒロインはその集会に付き合わされているし
主人公をいじめた筆頭その1は父親に暴力をふるわれており、
筆頭その2は実は震災孤児で、同じ震災孤児仲間がひきこもりと化しているのに無力感を感じている。
(このひきこもり君がKo2のオーナーで、終盤、デウスエクスマキナ的な大活躍をしてくれるので、
ヲタにはかなり心やすらぐ構成となっております)
……この映画を「つまらない」「子供だまし」と言い切るのは、
親に愛され、饑餓や無力感や絶望とは無縁の、さぞや満ち足りた子供時代を送った方々なのでしょう。
それとも、そんな不幸だった子供時代を「あんなの子供だまし」「たいしたことなかった」と
切り捨ててらっしゃるんでしょうかね?


個人的には、主人公のふれんど「くらげ坊」が反則的に可愛らしい。
なにかというと主人公のデイバックに潜りこみたがるのだが、
中に入ると安心して「くるるるる」と低い声でうなり始めるのだ。
猫飼いならキュンと来ずにはいられません。反則!
ちなみにヒロインのふれんどは、モリゾーみたいなふさふさ巨大ボディで、ま、トトロですな。
ほとんどのふれんどがCGなのに対して、この巨大ふれんどだけは着ぐるみで、なんかアレだ。中の人は誰だ!
いじめっこ達のふれんどもユニークで、何頭にブリキ缶かぶってんだと思ったら、実はブースターついてたりして面白い。
あと、やたらアナログなロボットっぽい外見のふれんどハヤオの持ち主が駿。きっと名字は宮崎だな。


ミクさんの「Last night,good night」は、クライマックスに持ってくるには少しさびしげな曲調だけど
ストーリー全体の、なにか喪失した時代の空気的なものにはマッチしておりました。
子供たちの演技も、少なくとも見苦しいほどではない。近年の子役ブームでレベル上がってんのかな。
むしろ黒マント厨二軍団の方がきつかったわ。大人のくせに滑舌だけでいっぱいいっぱいとか。


そんな訳で、この映画、監督本人は子供達を対象だと言っているが
「子供達と、昔子供だった大人達」くらいに幅を広げた方がいい。
少なくともネット上の評判の悪さにためらっているのなら、見ておいた方がいいと思う。
つーかさぁ、皆さん映画初めての人に冷たすぎない?
この人は自分の名前でお金集めて自分の力で映画作ったんだよ? エライよ?
りんたろうの「メトロポリス」とか大友克洋の「スチーム・ボーイ」とか思い出してみろ?
人様の金使い込んでどんだけ赤字出しやがったよ? 
そーゆー監督サマに比べたら、村上隆の方がよほど姿勢に好感が持てるし、
ビジュアル優先の人種とは思えないほど、お話もしっかりしている。
バランス感覚に優れた人なのだろうなと感心してしまった。


ちなみにエンディングが終わった後に、次作の予告が少しだけ流れる。
三部作構想ということなので、できれば完成させてほしいものだ。