今週のお題「テレビドラマ」

リア充ライフには興味が持てないので、テレビドラマはまず見ない。
たまに、アンテナにひっかかると視聴を続けることもあるが。
最近だと、「孤独のグルメ」や「終電バイバイ」かな。
双方の共通点は、人間よりも街のたたずまいを重視したつくりだってことか。


さて本題。
「女信長」の評判が芳しからぬ様子。
いやまぁ、確かに諸手を挙げて褒めなならん内容でもなかったけど、
世の中、もっとヒドいシロモノがゴロゴロしてると思うのですよ。
それを鑑みると、やや不当な評価を受けているかなーと思ったりするので
前後編を完走した感想などを書いてみたりする。


ます、信長が女で、主演が元ヅカの男役と聞いた時点で、自分が思ったのは
「茶々〜天涯の貴妃〜」路線かなということだった。
実際この発想は的を得ていたようで、制作は東映
時代劇のノウハウがあるだけあって、手慣れたつくりとなっておりました。
画面から漂ってくる雰囲気に違和感がないのですな。
自分的に、戦中戦後もの含め、時代劇系で一番イラつくのって
「喰うや喰わずの設定なのに、パリッとして糊の効いた新品の服着てる登場人物」とか
「柱やら天井は年降りた造作なのに、青々とした畳と漂白された白さの紙の障子」とか
「草木も眠る丑三つ時までずっと起きてたはずなのに、おろしたての形のままの和蝋燭」といった
そこの一手間を省いてんじゃねーよこのボケ!的、リアリティのなさ。
この時代劇からは、そういった違和感は目に飛び込んでこなかった。
裏返せば、非日常的な絵面だけで構成されたドラマともいえるのだが、
(信長が飲み食いするシーンほとんどなかったような)
しかし、それはそれで一つの戦略だ。


お話の内容としては、跡継ぎがいないので男ということにされた信長が
弟や母と対立してぬっ殺し、
濃姫とは「女であることを黙ってる代わりに濃姫の片思いも許す」的協定を結び
お市濃姫と女の子のカッコで城下をブラブラしてたトコで暴れ馬に蹴られかかり
窮地をイケメンな浅井長政に救われました!
カッコいいから私の秘密バラして彼女にしてもらっっちゃお! ついでにお市も嫁がせて同盟だ!
信長的には天下統一後は浅井長政に後をまかせるつもりだったのだが、
しかし、史実的には当然浅井は裏切るわけで、そこには寝取られ女・お市の怨念がからんでたり。
そして明智光秀が登場するのですが、こっちはお約束的に濃姫の片思い相手だったりして
こっちとも、正体は明かさないままだけど寝ることは寝る。
そして、騙してヤッちゃったつもりが正体バレてたことを知った信長は
元々、底知れぬ才気を感じさせる明智に対して愛憎入り交じりまくりで、
歴史上有名な明智いじめに妙な色香を添えております。SMというかDVというか。
んでもって毛利攻めにかかっている秀吉が「女だってバラされたくなければ天下を譲れ」と言い出して
明智は信長を解放するために本能寺の変を……という流れ。
焼け落ちた本能寺から信長を救い出したのは、家康配下の服部半蔵
実は初恋でしたと家康から告白されちゃうのだが、
ラストシーンは女の姿に戻った信長と、秀吉に討ち取られたはずの明智が南蛮船に乗って海の向こうへ……という
なかなか甘ったるい厨二なオチになっている。
この流れを是とするか非とするかだが、
そもそも「信長が実は女」の時点で史実との矛盾はどうしようもないのだから
(当然ながらこの世界観に生駒御前なんぞ出てくる訳がない)
ツッコむのは野暮というものなのではあるまいか。


信長が女性だということを知っているのは、血縁関係の父、母、弟、妹、
自分からバラしたのは共犯者的存在の濃姫と、枕を交わした愛人浅井長政
知られるつもりがないが見抜かれてしまったのが明智光秀
間者を通して知って、タイミングを伺ってたのが羽柴秀吉
人質として幼少時代を過ごす間に感づいてたけど黙ってたのが徳川家康、という流れ。
つまり柴田や丹羽の重臣らも知らない訳で、
そう考えると窮屈な人生をすごす男装の麗人サファイアやオスカルのイメージがあるが
この信長センセ、ちょくちょく女のカッコで城下をお忍び歩きしたり、
濃姫の侍女のふりして明智と茶ぁしばいたりしてるので、
どちらかというと「男と女のいいとこどりしてる」的なノリ。
可哀想というなら、それなりに惚れて嫁いだ長政は姉ちゃんに寝取られてるわ
その長政から最期まで拒絶されるわ万福丸は磔だわ、
秀吉の方が好きだったのに柴田勝家に嫁がされるわ(信長生前にこのイベント起きてます)
……うん、お市の方が気の毒だよね。


こうやって書き出すと弁護するとこが見つからないなぁ。
頭空っぽにして見る分には楽しかったドラマなんだけどなぁ


個人的には、やはり伊勢谷友介が良かったかなと思っております。
朝倉攻めの最中、毎度おなじみ、お市からの陣中見舞いの小豆の場面で
一人だけ緋縅の鎧を着けていたのですが、これが彼の容貌に映えること!
秀吉はこの時点ですでに信長=女、浅井とデキてることを知っており
浅井を盲信している信長を見る目が他の家臣と少しだけ違うあたりを
微妙な目線でちゃんと演じわけてらっしゃいました。
あと、桶狭間の時点ではまだ足軽だったので、褌姿を披露してらっしゃいます。
終盤、信長に天下譲りを迫る時にも、海老茶に金糸で刺繍を入れた足袋を履いていて
「ああ、安土桃山サイコー」と大変幸せな気持ちになりました。
明智光秀は、初代トート内野聖陽氏で、ヅカな信長とたいへんしっくりした絵面になっております。
あと、この作品の明智は妙に南蛮に詳しく、信長に南蛮鎧を贈り自分も着用するのですが
これが似合ってらっしゃいましたな。
あと、なぜかパイプオルガンとか弾けたりして面白い。バテレンか!
(それにしても十字砲火の説明で「イタリア」はないだろ。
 この頃はまだベネチアフィレンツェナポリなんかのはずだ)
中村獅童柴田勝家で顔を出しており
「そいや茶々の時も家康=年齢より老け役だったなぁ」と感慨に浸ったりしました。
コメディリリーフとして、今川義元三谷幸喜足利義昭が佐藤次・マメシバ・二郎で
キャストも悪くなかったと思うんだけど、なんでこんなに評判悪いかなぁ。
乙女ゲーでよくあるぞ、この手のご都合主義的な戦国。
ラストシーンなんか、モロに光秀エンドだし。
長政や秀吉とはフラグ立て損ねた感が満々。
ん? 乙女ゲー?
…………
…………
…………
あ。

戦国アンジェリーク 1 (B's-LOG COMICS)

戦国アンジェリーク 1 (B's-LOG COMICS)

なんか設定に違和感ないと思ったら、コレだわ。
(読んだことはないのだが)


ま、なにはとまれ、東映はこれからも時代劇を作り続けてほしいと思います。
継続は力なりっていうしね!