「新生活」新しいことに挑戦してみた結果

お題をなんとか曲解しようと、
「新生」銀行の「活」用法とかいうネタを考えたが、そこから先が続かないでござる。
猫と共に生きることを選択して以来、同じ土地に住み続けているので
新生活という感覚はほど遠いなぁ。


と、考えていた矢先、スーパーのおつとめ品コーナーに
筍が山積みになってるのを見つけた。
元値650円が150円。投げ売りですな。
……ま、この21世紀、自ら筍を茹でようとする人間がいかほど存在するのか。
いや、それなら最初から市場に出回らないだろうし。
やはり売り場の彩り的に必要なのかもな、筍。
何はともあれ、
「人として生まれた以上、一度くらい筍を調理してみてもいいだろう(固い決意)」
という訳で買ってみることにした。


さて家に帰って、どう料理するかなと考える。
こんな時にありがたいのはインターネットさまでございます。
たけのこ、レシピでぐぐろうとすると……ん?
レシピの前に「たけのこ ゆでかた」が変換候補の上位に上がってくる。
筍って茹でないと食えないの? 刺身とかでも可なんじゃないっけ?
出てくる記事を読んでみると、新鮮なら刺身もありだが、
時間が経過したものはあく抜きをしないといけな様子。
時間は経過……してますな、おつとめ品だもんな。
どれ、人として生まれた以上、一度くらい筍のあく抜きを(以下略)。
再度検索をかけてみると、あく抜きにはぬかが必要な様子。ねーよ、んなもん。
「そうか、昔はどんな家にもぬか床があったから、ぬかも常備品だったのだな」と思い、数秒後
「いやいや一昔前は自宅で精米を行っていたから、ぬかはありふれたものだったのだ」と気づく。
こんだけ食生活も変われば、筍を自分で料理する人口も減るだろう。
さて、どうするか、と考えていたところ、重曹でもあく抜きができるようなので、ありがたくこちら路線で。
小麦粉の安売りに遭遇して、粉からホットケーキを作ろう〜ベーキングパウダ高い〜じゃあ重曹で、と購入したのだが
これが妙にしょっぱくて「こんなホットケーキは却下だ!」とそのまま放置されていたものだ。
世の中、何が役立つかわかりません。


まず筍の皮を剥くのだが、これがまず驚き。
何枚剥いても私の知ってるたけのこにならない。
この調子で剥き続けていったら、なくなってしまうんじゃ?
恐怖にかられ、適当なところで止める。皮付きで茹でていいらしいしな。
穂先を斜めに切れと書いてあったので、適当なところで切り落として、
皮にも切り目を入れ、我が家で一番大きな鍋に投入。
水1リットルに重曹大さじ1の割合で投入し、水から火にかける。
沸騰したら弱火にして30分ほどそのまま、その後火を止めて一晩放置した。
そして翌日……皮の色が溶け出たのか、茶色い水から筍を取りだし、
皮を剥いてみたら……
…………
…………
おお、なんかたけのこの水煮っぽいものが出てきた!
皮が、どのあたりまでが皮で、どこから食べられるたけのこなのか、明確な区切りがわからないが
それにしたって、立派なたけのこ様である。
150円でこれは安いわー。
さっそく味噌汁を作ってみました。
気分的になんとなくわかめを入れてみたが、わかめも春に採れるものだから、合ってるよな。


口に入れてみると、普段食べてる出来合のたけのこと違う、かすかな苦み・えぐみっぽいものが一瞬だけある。
これがたけのこ本来の味なのか、ヲイラがあく抜きをうまくできていないのかは不明だが
野趣を感じる程度の風味なので、これはこれで春っぽくてよろしい。
その後、白だし&油揚げでたけのこご飯も作ってみました。大当たり〜〜!
なんでしょう、この食卓に突如わき起こった旬ブームは。


それにしても、最初に筍を食べようと思いついた人って、誰なんだろう。
よくもまぁ、芽を出した直後の竹を食べてみようなんてよく思いついたもんだ。
とはいえ、そのセンスは間違っていない。
あくが抜けたたけのこの、皮と食べられる部分をよりわけていて気づいたのだが
たけのこには澱粉質が含まれている。つまり、根茎の一種なのだ。
「地面から出た直後なら、まだ根っこの性質を持ち合わせているかも。チャーンス!」とか思って
掘り出してあれこれ工夫を凝らしたんだろうか。すごいよなぁ。
……すごいと言えばたらの芽もすごい。木だよ? 
都会の季節感覚で例えるなら、桜のつぼみが出てきたところをむしって食べちゃうんだよ? ありえねー。


そう考えると、筍もたらの芽も、割とせっぱつまった事情から見いだされた食材かもしれない。
春という季節は冬の直後=備蓄が底をついている頃なわけだし、
狩猟で得た動物たちもかなり痩せているはず。
かくなる上は食べられそうなものならなんでも試してみる、的な精神から
あれこれ工夫を凝らしてみたのかもしれない。
そう考えると、心浮き立つ春を純粋に楽しめる21世紀の日本て、やっぱ恵まれてるよなぁ。
先人の皆様、たけのこ、ありがたく頂戴します。