小説「宝島」後編

島に到着するまでにこの長文……甘かったぜ。
だが負けないっ! いざ後半!


*上陸組に加わった動機は?……ジム個人の判断
*上陸して出会ったのは?……ベン・ガン
*彼を島に置き去りにしたのは誰?その理由は?……海賊仲間:フリントの宝があると言われて探したのに、見つけられなかったのに腹を立てた
*砦の攻防で死んだのは?……レッドルース、ハンター(ジョイスが最終的に行方不明に)
*ジムが砦を抜け出した動機は?……ジム個人の判断
*砦を抜け出した当初の目的は?……ベンガンのボートを確認するため
*ヒスパニオーラ号に残って見張りをしていたのは?……舵手ハンズ、赤帽の男
*ジムと一緒にヒスパニオーラ号を動かしたのは?……舵手ハンズ
*地図に書かれた場所に宝は?……なかった:既にベン・ガンが掘り出していた
*最後にシルバーはどうなった?……帰途途中の港で逃亡
*逃亡を幇助したのは?……ベン・ガン


島での攻防で他のメディアと異なるのは、やはりジムの単独行動の動機だ。
戦いの痕が生々しく残る砦への嫌悪、戦いへの恐怖が、砦を飛び出す原動力だったことをジムは素直に認めている。
かなり自己本位で、主人公の心理としていささか相応しくない。
最初の、勝手に上陸した件を合わせると、完全にアウトだろう。
実際、作中でリブジー医者に「スモレット船長が怪我したとたんに逃げ出すとは」と咎められている。
だから他のメディアではもっと利他的な理由だったり、飛び出すにしても
仲間に断ってから出ていくように改変されているのだ。
……これをどう考えるか、だなぁ。
娯楽作品の主人公として考えた時には、原作ジムの行動は問題だ。間違いない。
その一方で、海千山千の大人たちの間で、少年の純粋さと無鉄砲な勇気が何物にも勝るというのも、
あまりに奇麗事すぎる。
特にこの後の展開で、ジムは舵手ハンズと立ち回りを演じて、最終的に彼を殺すのだが、
無鉄砲な勇気で人を殺されちゃたまらない(苦笑)
その件を抜きにしても、地図の場所に宝はなく、ベン・ガンがとっくに掘り出していたという事実、
つまりフリントも恐れたシルバーの知恵を出し抜いたのが、平凡な海賊の年月かけた調査だというオチと合わせると
少年のココロがすべてを切り開くという「友情・努力・勝利」路線はどうなの、という気もする。
実際、原作はどこかダークな後味を残して話を終わらせている。

牛と荷馬車の綱で引っ張られようと、わたしはあの罰当たりな島には、もう二度といかないつもりだ。
そして、いまでもわたしのがみる一番の悪夢は、あの島の岸にどどうっと打ち寄せていう波の音を聞くときか、または
「八銀貨!八銀貨!」というフリント船長の鋭い声が耳の中に鳴り響いて、
寝床の中でがばと飛び起きる時なのだ

原作ではジムの故郷組はみな、身の丈に合った幸せな生活を送っているのだが、
その最後に、これなのだ。
……バランスの問題、になるのかな。やはり。
ただ、ジムが一巻してやんちゃな少年というだけなら、そのジムの敵であり、
もう一人の主役であるシルバーも「ただのガキに出し抜かれた男」という安いイメージだけだろう。
そう考えると、やはりこれで正しいかな、という気もする。


ともかく、原作を読んでみて感じたことは
「荒っぽい部分もあるが、非常にバイタルに溢れ、手強い」という印象だった。
グレイの最大の見せ所ときたらスモレット船長の犬と化すところだし(苦笑)
ジョイスもいつの間にか消えてるし(いつの間に死んだんだよ)
黒犬は結局何だったんだとか、暗闇のピュー(=blind:盲目ってことだよね)空気すぎとか
ビリー・ボーンズの出番長すぎだとか、
そもそもロング・ジョンに対する船長の名前がsmalletとかどうなのとか
いろいろあるのだが、これらエグミのような荒削りな部分も、やはりこの作品の味なのだ。
誰もに愛される話だとは思わない。
パイレーツオブカリビアンが席捲している21世紀ではなおさらだ。
それでもしかし「宝島」はこれからも読み継がれてゆく作品だろう。