小説「宝島」前編

アニメ映画2本、テレビアニメ1本、実写映画1本、小説1本。
どこから手をつけようか考えたが、基本は成立順でいくことにする。
というわけで、偉大なる原作・小説から。

宝島 (新潮文庫)

宝島 (新潮文庫)

ラノベ読み的には金原瑞人訳の偕成社版を手に取ったのだが
目を通した後に「粗筋あかったからいいや」と手放してしまった。
今回はkonozamaのレビューから、これが肌に合いそうだと思った新潮社を選択。
うん、しっくりきました。内容が頭に入る。
つか金原訳は単語を色々いじくりすぎじゃね?
「black spot」がなんで「黒紙」なんだよ。


様々なアニメ・実写映画を比較するために、まず箇条書きでディテール把握。
*舞台は?……宿屋「ベンホー提督亭」〜港町ブリストル〜ヒスパニオーラ号〜宝島
*宿屋に最初に訪れるのは?……通称船長、ビリー・ボーンズ
*ビリー・ボーンズが警戒するのは?……一本足の男
*ジムの父親は?……冒頭では存命しているが、すぐに病で死亡
*地図を手に入れたいきさつは?……船長の死語、未払いの宿代を回収するため衣装箱を開けた
*宝を埋めたのは?……海賊フリント
*ジムの故郷から宝島への同行者は?……地主トレローニ、医者兼判事リブシー、トレローニの雇い人レッドルース、ハンター、ジョイス
*ジムとシルバーが初めて出会うのは?……シルバーの居酒屋「遠眼鏡亭」
*シルバーの役職は?……船のコック、昔はフリントの操舵手
*一行が乗り込む船、船長、副船長は?……イスパニオーラ号;船長スモレット、副船長アロー
*副船長アローはどんな男?……水夫と気安くしすぎで、常に酔っている。航海途中で海に落ちて行方不明に
*林檎の樽を甲板に置いたのは?……トリローニの考え
*ジムが叛乱の企みを聞いたのは?……林檎樽の中
*見つかりそうになったジムを救った偶然は?……林檎より酒がいいという舵手ハンズの発言
*ジムの故郷出身者以外にジム達に味方したのは?……船大工見習いのグレイ
*グレイがこちらに付いたきっかけは?……スモレット船長の呼びかけ


原作でのシルバーの容貌は
*左足がほとんど腿の付け根のところから切断され
*松葉杖を当ててぴょんぴょん飛び回っていた
*たいそう背が高く頑丈な男で、顔はハムのように大きく
*醜男で青白いで青白いが、利口そうでにこにこしていた
――ハムのように大きい、というのがどういう意味なんだろうなぁ。
金原訳はこのあたりを「太っている」と意訳していた気がする。
それもアリだが「太ってる」と「頑丈」は同じ身体に備わらないような?
とにかく対外的には親しみやすい、いかにも好人物を演じている。
「柔和で、慇懃で、お世辞たらたらの船員」だ。
これがシルバーの本質なのか、対外的な仮面なのかは、結局終盤になっても判らないままだ。
このあたり、作者が「ジギルとハイド」の著者だという事実が面白い。
シルバーの中には「BBQ(肉焼き)おやじ」と「海賊シルバー」が
葛藤することなく同居しているのかもしれない。


さて、その海賊シルバーだが、まず過去
*若い時には良い教育を受けたので、その気になれば書物のようにしゃべることもできる
*強い。4人と取っ組み合いをしても勝てる
*フリントに恐れられていた、が同時に自慢にもされていた(シルバー本人談)
*フリントに恐れられるくらい、気の利いた男だった
ビリー・ボーンズもシルバーを警戒していたし、ひとかどの海賊だったのは間違いないだろう。
片足というハンデでそれなのだから、足を失わなければどうなっていたのやら、だ。
また、海賊としてのシルバーも、人心掌握に長けている。
終盤近くで子分たちから排斥されかかるのだが、それをまたたく間に収めてしまう。
その手段は恫喝であり、整然とした理論であり、事前に隠し持っていた切り札をここで出すことだ。
なるほど、フリントに恐れられていた「気の利いた男」というのは、こうした側面だろう。
こんな場面に何度も立ち会えば、自分も「切り札」として利用されるかわからないという疑念がわく。
シルバーの周りに「物の弁えもなければ、道理も知らない」人物が集まるのも道理だ。
無条件に彼を信頼するのは、知恵という刃が自分に向くことを想定しない、想像力に欠けた人間だからだ。


――この考えを念頭に置いて読み直してみると、スモレット船長が面白い発言をしているのに気づく。
「きみはきみなりにいい子だよ、ジム。
だけど、二度とおまえと一緒に航海に出ようとは思わんな。
きみは生まれつきあんまり人気者なんで、わたしには手におえんよ」
これはそのまま、船長フリントの操舵手シルバーに対する評価だと言われても違和感がない。
原作のジムとシルバーは(他のメディアと異なり)どこか似たもの同士なのかもしれない。

想像以上に長くなったので、まずここまで。