口直しに「剱岳〜点の記〜」を

見てきました。
正直、8月に入ってやってるとは思わなかった。
確か6月下旬公開だと思ったのだけど、
夏休み映画の攻勢の中、よくスクリーン確保できたよなぁ。
……他がキッズ映画ばっかってことでもあるんだろうけどね。


予告編を劇場で見た時には
「軍所属の登山家や民間登山家や地元民や行者が混成チームを組んで
剣岳にアタックする話」だと思っていたので、展開にやや戸惑い。
……まぁ、考えてみりゃ戦前の軍隊が民間と一緒になんかやる筈ないか。
このように、知識が全くない人種でもすんなりと理解できる作りになっていて、
このあたりがロングランの秘訣かと思いました。



タイトルにある通り、主役は剣岳連峰の自然。
ヤバイ。21世紀だというのに人類を拒み通すその佇まい。ハンパじゃない。
万年雪、緑のカケラもない岩肌、たたきつける雨、風。
無事に撮影が終了したのは僥倖としか思えない、自然の恐ろしさがひしひしと伝わってきました。
なんでも実際に登山した時の手記を参照し、同じ日程で撮影に入り、
出演者にもロケ中はヒゲを剃るのを禁じたというリアリティ重視っぷり。
実際、終盤になると出演者の衣装や小物が
いいカンジにくたびれてきていて、
「ああ、こういう絵が見たかったのよ」と頷いてしまいました。
(近頃の大河ドラマも少し見習え?
おろしたての糊バリバリで繊維もピンシャンした着物に
縅の染め色も鮮やかな鎧ばっか着せやがってよ)



軍が主導する地図作製隊vs民間登山隊、
前人未踏の剣岳を制するのはどちらか、という構図の中の群像図を描いた作品なワケですが
対決の勝者はどちらでもないが、どちらもある意味報われたという形で終わります。
……これが実話なんだから、実にいい話だよな。
歴史のロマンであります。


セットの中の人間をもう少し丁寧に撮ってもいいような気もしますが
世界に出せるレベルの作品に仕上がっていると思います。
ちゃんと日本陸軍は悪者だしな!
出演者と制作者、どちらもごくろうさまでした。