野田地図にリベンジしたよー

チケット無駄にしたので「このまま見逃そうか」と思っていたNODA・MAP
悩んだ末に当日券を捕獲することにしました>25日の水曜日
bunkamuraの階段は寒いというほどではありませんでしたが
ほんのり底冷えもしてきて手袋が手放せなかったり。
前売り開始一時間前には到着したのですが、
すでに階段の上近くまで列が並んでました。
自分より前の方に並んでるのは、下北沢あたりにいそうなサブカル系でしたが
発売間際に階段を駆け上がってきて後ろの方に並ぶのは、
小綺麗なヒールやペカペカのバッグの持ち主なのが面白いと思ったり。


年なので丸椅子の臨時席を選択。ちょっぴし見切れても木に縞線。


んで鑑賞。全一幕。
……梨園で取れた大根という希有な植物が舞台上を徘徊。
まぁ、自分のペースに役を引き寄せるのも才能よね、と。
(このお嬢さんを舞台に存続させようとしているのはどういう勢力なの? D通とか?
父親がプッシュするとも思えないのだけど)
野田秀樹はいつもと変わらぬ声で変わらぬ姿。
あんまり見せ場がない役かな?
劇場全体を、息もできない沈黙に巻きこむような場面がなかったのがちょっと寂しい。
でも、同じペースで走り続けてくれることが嬉しいし、
それがどんなに大変なことかも判っている。
池袋の東京芸術劇場の芸術監督になったらしいけど、どんな方向に進むのかなぁ。
芝居として、今回は演出にダンスユニットを取り入れており、
場面によってはそれが冗長すぎて「いいから次に進め」とか思ったりしたが、
まぁ、こーゆーのもありかなと思ったり思わなかったり。
セリフでできることをやり尽くしてしまうと、マイムに走るのかしら。
そんなダンスユニットの「コンドルズ」どっかで見た顔だなと思ったら
サラリーマンNEOサラリーマン体操の方々でした。
パイパーという、生き物ともロボットとも風呂(笑)ともつかぬ存在を
違和感なく表現してらっしゃいました。
んで、白眉は橋爪功。いやぁ、素晴らしい。
終盤近くの「オレが喰ってるのと、同じモノでいいのかなぁ……」はすごかった。
のそのそした冴えないオッサンの日常と、
ボーダー越えちまった××の凄みが見事に同居した声色でした。お見事!


でも、別格は宮沢りえ様。
いいだろ、様を付けさせろ。アラフォーの、バブル時代のアイコンなんだよ彼女は。
そらもう天女なんじゃねぇのと思うような資生堂カルビーCMのフォトジェニック時代から
ずっと憧れ続けてきたのさ! サンタフェは買わなかったけどね!
(当時勤めていた会社の誰かが、パチンコの景品かなんかで手に入れたのが
回覧されてきたので、一応見ることは見た。
なんかこー「伊豆の踊子」的な脱ぎっぷりだなと思った)
どこぞの中卒のデブと結婚すると聞いた時には
「この、花の盛りを捨てて褌洗いに走るのかよ!」と悔しさで転げ回り
「……でも、本人が幸せになれるんなら、それが一番大切だよなぁ」と
断腸の思いでこっちが決断した頃に! 
デブが不義理をしでかしやがって!
もうそれからずっと「頼むから幸せになってくれ。幸せになってくれ」と
祈るような気持ちで見つめ続けてきたのさコンチクショー!
……芝居はすっかり野田の流儀に乗っかっており、安心して見られました。
(声が枯れてるとか抜かす輩はシロウト。野田秀樹演出は初めてでいらっしゃいますか?
「から騒ぎ」の斉藤由貴か「国姓爺合戦」の桜田淳子を見て出直してらっしゃいませ?)
役柄的には、ちょっとグレ系のいじわる姉さん&その子供の頃(+α)を演じ分ける必要がありましたが
子供と大人をちゃんと声色で使い分けていましたよ。野田の芝居の中で。
……うん、大したものだと思います。
世間様が気になさるのはボディラインでございましょうが、
衣装のせいもあって目立ちませんでしたね。
というか、見ているこっちは終盤まですっかり忘れてました。
……いや、話の展開上、もう一人の方が妊娠すんのよ。
そこでさすがに思い出し「こら降りられんわ」と思いました。
んでラスト、名前が出てくるだけで姿を現さない別れた恋人が帰ってきたと聞かされて
建物を飛び出してゆくんですわ(そのまま退場)
・゚・(ノД`)・゚・ヨカッタネェ、ヨカッタネェ
虚実入り交じりで「やっと報われたねぇ。今度こそ幸せになれるねぇ」などと。うん。
芝居の中で宮沢りえの役は、妊娠した妹に向かって
「今のこの世界に生まれてくることが、幸せにつながると思ってるの」と
子孫繁栄に対してネガティブな発言をしております。
芝居の展開も、こらもー滅びるしかねーだろこの星の人類、な運び。
ぶっちゃけソイツは、くるりと回って客席の我々に突きつけられた匕首な訳で。
……その芝居を、妊娠してたまま上演しつづける事は
大事な意味を持つことなのではないかと。



これから先の宮沢りえ嬢に、どのような未来が拓けていくかは知りませんが
貴女の今日までの道程に、無駄なものは何一つなかったのだと申し上げたい。
そして5年先、いや10年先でいい、
脂の乗ったセクシィな姐様系として、また私達の前に帰ってきて下さい。


ちゅー訳で、寝不足でウトウト&寒さでプルプルしながら並んだ甲斐のある芝居でした。