冬の朝日〜ポエムですよ〜

意に染まぬ用件で朝っぱらから外出する。
うわぁぁんどうせならコミケに行きたいぃぃぃ。
……3日目だから欲しいモノはない訳だけど。


この時期にしては暖かな空気の中を自転車で走り抜ける。
まっすぐに整備された道路は、車も人影もほとんどない。
正面から昇る朝日が私を照らしだす。


……ああ、私はこの朝日を知っている。



今から十何年も昔、家人の選んだ住居に暮らす千葉島民だった頃
私は東京ディズ二ーランドでアルバイトをしていた。
夏や冬の長期休暇(特に大晦日〜元旦)は、必ずといっていいほどシフトを入れていた。


朝の7時からフルタイムで働いていたので、6時過ぎの京葉線に乗って
舞浜まで向かうことになる。
年末年始に入った京葉線はガラガラで、車内暖房が利いている。
これから始まる長くて苦痛な時間、そして早起きの気だるさのせいで
私は憂鬱な気持ちで考えていた。
「世界で一番夢に近い場所に近づきながら、その夢の果実を手にせず、夢の周りで働き続ける、
一年の最後と最初に、なんでこんな事をしているんだろう?!」


とうに市川塩浜を過ぎていた京葉線がカーブを切る。
左手に広がる東京湾には、船舶の影も、もちろん建物もない。
その海の向こうから昇る朝日、海面にまっすぐな光の道が敷かれたようだ。


……自分で入れたんだよなぁ、シフト。
時給もいいし、食堂はおいしいし、住居にいても良いことはないし。
夢が手に入らなくても、どうせ働くなら夢より遠いよりは近い方がいい。
それに、働くことだって嫌いじゃないしな。


遮るもののない朝の光、何もかもが照らしだされて明瞭になる冬の朝。
ここに居るのは私の意志、この苦行を選んだのは私。


自転車を漕ぎながら思う。
これから先の人生で、何度もこの朝日を見るだろう。
世の中の皆が休んでいる季節に、苦痛に身をさらし
何の因果でこんな真似をと憂鬱な気持ちに延々苦しめられ
……そして必ず、朝日は昇るのだ。
午後6時過ぎの東の空から。
暖かな光で視界の隅々まで満たし、向かうべき障害の位置を示し
そして私に自覚させてくれる。
これは私の望んだ道程、これこそが私の意志だと。



暖かい冬を望む人には温かい空気を、
厳冬を望む地域には寒気団が在りますように。
さぁ年賀状を書きますよ、と。