パンダコパンダ前哨戦
津田沼テアトルシネパークという
小さなスクリーン2つだけと、
ラインナップがなかなか渋い映画館がございましてね。
ぶっちゃけ千葉県唯一の名画座なので大事にしなくてはと思っている。
(ロードショー作品もやるので、正確には名画座ではないのだが)
ちなみに関東は、神奈川と東京には名画座があるけど
千葉と埼玉にはないんだよな。
こんだけシネコンが増えてしまうと、
昔ながらの小さなスクリーンはこういう戦略取ってもいいんでない?
その津田沼シネパークで「崖の上のポニョ」公開記念企画で
パンダコパンダ二本立てをやるというので、
こら見逃す手はねーだろ、と見参。
(もう一本はロシア版「雪の女王」だが、こっちは見たので。
少なくとも山賊の娘は出崎版より良かったなぁ)
ガラガラの客席に
「アニヲタは何をしておる!今これを見ずしていつ見るのだっ!」と
軽く憤慨したのはナイショですよ?
以下、一つづつ。
*パンダコパンダ
いきなりスタッフ入りのOPに「時間間違えた?ED?」と慌てる。
水森亜土の唄に合わせて動くパンダのアニメが、何となく村上隆チックで面白い。
親子パンダの父、パパンダのデザインも、2008年の目で見ると
「奇々怪々」のキキの方に見えてくるフシギ。
どっちが先かなんてこた判りきっていし、村上隆がインスパイアしたとも思わないが、
何かをとことんつきつめると、こういう造詣になるのだろうか。
……物語は、ミミちゃん(小学生低学年)がおばあちゃんを法事に送り出すところから始まる。
「ミミをひとりぼっちにする訳には」とためらうおばあちゃんに対して
「あたし平気だから!」とミミちゃんが逆立ちをして見せます。
どうやらこの逆立ちは、ミミのテンションの高さを表現する記号のようですが
21世紀の目で見ると………………パンモロ。
つかミミちゃんスカート短いよ! 昔ってこんな服装だった?
こんなミミちゃんの家は、道路から入った竹林の奥。それなんて永遠亭(違)。
お菓子の家のようなシルエットに、電気もガスも電話もないこの家に、
まずコパンダが、続いてパパンダがやってきて、そのまま住み着いてしまいます。
二言目に「特に竹やぶがいい」というパパンダは
ユーモラスな中にもブキミさがあって、確かにトトロのアーキタイプかもです。
しかし喋ろうが二本足歩行しようが、パンダはパンダ。
案の定動物園からは探されておりました。
そしてミミちゃんが学校に行くのにくっついてったコパンダは
給食室に忍び込み頭からカレーを浴びて(ああ昭和)
「熊が出た!」といって追いかけ回されます。
そっかー、熊が出たら追いかけるんだ、そもそも町中に出るんだ熊。
平成から見ると、なんとかけはなれた価値観なのだろう。
まぁ、アレコレあって「ミミちゃんちに熊が立てこもってる!」と騒ぎになり
パンダと判明しつつ、動物園にも見つかってしまうが、
結局、ミミちゃん家に住まい毎日動物園に出勤することで解決。
このあたりキッチリと伏線回収&みんな幸せな大団円になっていて見事。
宮崎、ストーリーテリングとしても一流だなと思ったり。
余談ながらミミちゃん家は、ヘンゼルとグレーテルに出てくるお菓子の家のような
薪ストーブで調理を行っており、
ミミちゃんが料理をしながらヒョイと火加減を見た後
足でポンと薪を放り込む、テキパキした動きがサイコー。
ラピュタのシータの「おばさま、電話ってこれね」の打てば響く利発さの描写の
萌芽のようなものを感じました。
*パンダコパンダ・雨ふりサーカス
前作はコパンダがミミちゃんの家に迷い込んでくるのだが、
今回やってくるのはサーカスの団長&団員。
逃げ出したトラの子供を捜してやってきたらしい。
このあたりのモチーフは「さんびきのくま」を彷彿とさせる。
(↑女の子が熊の家に迷い込んで、お父さん用、お母さん用、子供用のグッズを使いまくって
子供用がことごとくしっくりくる話)
「さんびきのくま」では子供の品がオチを担当する訳だが、
パンダコパンダでは父親、パパンダの品がサゲとなっている。
「こんな大きなカップを使うのって、どんな人?」
「こんな大きな歯ブラシで磨くのって、どんな歯?」
とガクブルしているところへ、二匹&一人に脅かされて逃げ帰ってしまう。
ところが、トラの子は本当にミミちゃんの家にやってきており、
サーカスに届けて、トラのママと仲良くなる。
……と、このあたりまでが実は前振り。
降り出した雨がいつまでも止まずに、あれよあれよと床上浸水が始まるのだ。
あっという間に増えた水かさは、ミミちゃん家の一階部分まで達して
無事なのは二階、つか屋根裏と屋根の上だけ。
しかし二匹と一人はのんきなもので、屋根の上でビスケットコーヒーで食事。
ここでパパンダがうっかり朝食ごと屋根の上から落ちてしまうのだが、
水の中で、左手のカップから浮き上がった球体のコーヒーをパクリ、
右手のビスケットは集まってきたお魚がチョンチョンとつつく。
ユーモラス、かつシュールな絵柄です。
そして、ベッドを持ち出して水面に浮かべ、サーカスに差し入れに出かけるのだが
ここの映像が素晴らしくステキだ。
水彩画の背景の上に、セル絵のベッドと水の反射を重ねた結果
ベッドがどこまでも澄み切った水の上に浮いているように見えるのだ。
思わず劇場で感嘆の声を上げてしまった。
(その後は、非難のために放り出されたサーカスの動物たちを列車ごと助けて
めでたしめでたし、でおしまい)
とにかく、大雨洪水のシーンがよろしい。
雨ふりサーカスという題名になっただけのことはある。
あと、考証が細かいのがさすがパヤオだよなぁ。
水の中を列車が近づいてくるのを、団員の一人が気づくのだが
そのキッカケが線路に耳を当てて振動を聞き取るのだ。
平成のアニメ監督どもには思いつきせんぜ、これは。
「見てない作品だから見ておくか」のつもりでいたのに、
ものすごくハマってしまいました。
見に行くつもりのなかった「崖の上のポニョ」だが
「パンダコパンダ」を彷彿とさせるシーンがあるというので、困ったなぁ。
……というか、見に行くことになったのだった。