Dear Mr. and Ms. Saigon


(この写真は、http://www.airegin.net/blog/2008/04/2_4cf4.htmlより拝借しました。
あじん様、転載を許可していただき、ありがとうございます)


聖火がベトナムホーチミンを通過した。
どのような状況かというと、
Vietnam breaks up Olympic torch demo
http://edition.cnn.com/2008/WORLD/asiapcf/04/28/oly.torch.relay.ap/index.html#cnnSTCText
(魚拓http://s02.megalodon.jp/2008-0503-0218-20/edition.cnn.com/2008/WORLD/asiapcf/04/28/oly.torch.relay.ap/index.html)
ざっと訳してみると
ハノイ市場で北京五輪ボイコットの横断幕を広げた人が警官に拘留された(と市民が証言)
南沙諸島問題で中国、ベトナム両政府に抗議すると学生達が予告(?)
ベトナム政府はリレーコースもスケジュールもほとんど明かさなかった、
・18の中継所の多く(?)で、リレーは中国人権とチベット反政府運動への取り締まりに抗議する人々の襲撃を受けた。
・だが、中国旗を振る大規模な集団もやはり多くの中継所に現れ、抗議者を押しつぶした


だが、日本でのメディア報道はほとんどが「大きな混乱なし」だ。


代表的なのがこのタイプ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080430-00000718-reu-int
ホーチミン 29日 ロイター] 北京五輪聖火リレーが29日夜、国際ルートの最終地となるベトナムホーチミンで行われ、混乱なく終了した。
 当地での聖火リレーは、これまでの多くのリレー開催地と同様、ランナーの回りを多数の警察車両などが取り囲む厳戒態勢の中での開催となったが、目立った妨害行為などもなく、夜間の聖火リレーにもかかわらず、数千人の観衆に見守られながら平和的に行われた。
 聖火は北京五輪開幕まで100日となる30日には、香港に向かう。

(ロイターって例の「風下に一人だけ立ってる、チベット服に鉈構えた暴徒」の写真配信したトコだよね。
どんだけ犬なの?)
それにしても闇夜を走り抜けるたぁ、まるで××ですな。
そんな中で産経だけが気を吐いていたり。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080430-00000048-san-int
ベトナムで数十人拘束 聖火リレー( 4月30日8時0分配信)
 北京 五輪の聖火リレーは29日夜、中国への到着を前に最終地となるベトナムホーチミン市で行われた。警察当局は事前に中国政府に反発するデモ参加者の一部を拘束するなど、厳戒態勢で臨み、ゴールの軍競技場では政府に選出された中国系ベトナム人約3000人が聖火の到着を待った。
 リレーには約60人が参加。沿道では、南シナ海南沙諸島などの領有権問題やチベット問題で五輪ボイコットを求めるデモ隊と五輪開催の支持者が一部で小競り合いになる場面もあったが、大きな混乱はなかった。フランス通信(AFP)によると、米国を拠点に活動する民主化組織の情報として、数十人が当局に拘束されたという。聖火は30日、香港に向かう。(バンコク 菅沢崇)

この記事だけなら産経バンザイと叫びたいところなのだが
沖縄での米兵事件に関してはものスゴい頭の悪い記事だのコラムだのを掲載してくれるから
諸手を挙げる訳にもいかず。困ったものです。



さて、今日のタイトル&冒頭の写真にまつわる挿話なんぞを。
――4月26日。長野駅東口。長野朝日放送前の交差点。
四つ辻では、中華人民共和国の紅星旗と、色鮮やかな亡命チベット政府の雪山獅子旗がはためいていた。
聖火が長野駅善光寺口を通過したのは一時間以上前のことだ。市内西部に位置するエムウェーブ長野五輪会場)で折り返して、再び長野駅前に戻るには、しばらく時間があるに違いない。
そうした計算が無意識下にを支配しているせいか、両陣営のボルテージは『熱狂的』とまでは言えなかった。
(この後数時間もしないうちに、雪国獅子旗を持った青年が紅旗旗を持った集団に××されたり、車道の中央分離帯に上がりこんだ中年男性達がチベット旗を持つ人々を撮影する光景などが展開するのだが、これらは別の機会に譲るとしよう)
道をはさんで上がるシュプレヒコールの声は、反響する壁となる建物もないまま曇り空に拡散してゆく。
そんな中、チベット東トルキスタンの旗に混じって、見慣れない旗が掲げられていた。
黄色の地にオレンジの横線が三本入った旗だ。
色の組み合わせが南アジアの僧侶の袈裟と同じせいか、チベット国旗に混じって何の違和感もない。
「あれ、何の旗かな?」チベットの小旗を手にした若い女性が、誰にともなく訊ねた。
チベット国旗の略式じゃないっけ」A2サイズのチベット旗を掲げた青年が答える
「海外ニュースでも見たよね。同じ旗」手製のプラカードを両手に持った30代の女性が続ける。
「どこの旗なんだろうね」
彼らの話を聞きつけたのか、偶然同じ疑問を抱いたのか、近くの誰かが例の旗の主に話しかけたらしかった。
「これ、南ベトナムの旗」張りのある女性の声が上がった。
「そうなんですが」相づちを打つ声がかすかに聞こえる。
南ベトナム、中国にヒドい事されました」
人混みの中、距離もあるにも関わらず、言葉は一つ一つが明瞭に聞き取れた。
「今のチベットと同じね。絶対にゆるさない!」
それきり声は聞こえなくなった。会話は止んだようだった。
「……ベトナムと中国って、何かあったんですか?」若い女性が口にする。
ベトナム戦争があったじゃない」30代の女性が答える。
「結局共産主義北ベトナムが勝って、南に攻め込んでサイゴンが陥落して……」
若者二人の反応を見て付け加える。
「その時の話が『ミス・サイゴン』てミュージカル……知らない?」
芳しくない反応が返ってきた。
30代の女性は「ヘリが舞台に登場すんのはもう日本だけなんだよ」と続けようとして止めた。
その代わりに心の中でふと思う。
(そういや、あの旗を見たのはフランスの聖火リレーだったっけ。フランスが今回熱くなってるのは、
このあたりにも原因があるのかな)
(でも、今の会話でわかるようにベトナム戦争の記憶は薄れ、馴染みのないものになっているんじゃ……
だからこそ、他の国では電飾が導入されているのかな)
だとしたら、唯一フルセットの公演を続けるFarEastの……日本の人間は、
あの旗を、そして今の声を、その中に含まれた憤りと恨みを、どう受け止めるべきなのか。
そんな日本人の戸惑いをよそに、色とりどりの旗はただ自由に、長野の曇天に翻っていた。


(5/6:新宿区霞ヶ丘町にて)