詮無いこと・ラスト

奈良の朝焼けを見ながら、ひとつ気づいたことがあった。


もし渋谷の某カフェで首藤さんの姿を見かけることがあったとして
その時、私は首藤さんに声をかけたろうか?
……かけなかったと思う。
「わぁ首藤さんだ……!」とその場で立ち止まってじっと見つめてしまうだろうけど
そのまま立ち去ってしまったと思う。


同じ空間にいて、何を伝えろというのだろう。
ファンだったことを? ミンキーモモにどれほど感謝しているかを?
そうやって握手して「がんばってください」と言ったとして、何が変わるのだろう?
私に首藤さんの能力が備わるのか?
首藤さんの内面を知るすることができるのか?
モモやレミーの源を理解、解析し自分の中に取り入れることができるのか?
……できないだろう?
ちょいとしたミーハー心が満たされるだけだろう?


私の名刺に、首藤さんと共通する肩書きがあることは伝えないだろう。


そうやって考えると、私と首藤さんは
空間的に近い位置に居合わせたことはあっても、
やはり実際にめぐり合うことはありえなかったのだ、と気づいた。
……そういうもの、なのだなぁ。