「鹿鳴館」を読み解くための「潮騒」、おまけで「青の時代」

鹿鳴館」の「私はまだ美しゅうございますか?」と影山に尋ねた
草乃は本当は何を訊きたかったんだろう? というのは
時々ヒマになると考えてみることなのだが、
先日、答えの1つになりそうなモノを見つけた。
同じ三島作品の「潮騒」から。


潮騒」は、貧しい漁師の新治と分限者の娘・初江が
あれこれ障害を乗り越えた後に晴れて結ばれるという話だが
(今気づいたがコレ名前が対になってんのな。シャレか?
新=初だし、治と江もどっちもさんずいが付いている。
ちなみに初江は何人も子供が生まれた後の末っ子娘で、
一度は養子に出されていたという設定。それで初とかないわ)
今回、大事なのは脇役の一人、灯台守の娘・千代子。
島の外の女学校で寮生活を送っているという設定で
三島らしいミソジニーなキャラ造詣がされており、
近代能楽集の中の「班女」の女絵描きをほうふつとさせる。
この千代子が、新治をひそかに慕う故、二人の仲を人に告げてしまい
それゆえ二人は(一旦は)引き裂かれることになる。
さて、この千代子が休みも終わり島の外へ戻る日がやってくるのだが、
港で偶然新治と出会う。
千代子は自分のしでかしたことを勿論後悔しており、
新治にすべてを告げ赦しを請いたいが、もちろんそんな事ができる訳もない。
一言ふたこと言葉を交わし、去ってゆく新治に
(彼にとっては千代子はその他大勢の一人でしかない)
謝罪と懺悔と告白と入り交じった気持ちで、千代子は呼びかける。
その時、千代子の口をついて出た言葉が
「私って、そんなに醜い?」
……このへんの心理は、状況は違えど、草野に似ている気がする。
なるほど、草乃は懺悔と謝罪と、そして告白をしたかったのかもしれない。
相手が朝子でなくても、誰彼かまわないほどに。
ちなみに、影山同様新治も「美しい(なぁに、美しいがな)」と答えるのだが
草乃が影山を袖にして去ってゆくのと対照的に
千代子はこの一言だけで救われたと感じ、自分の思いを封印するのだった。
ここのところは少女漫画でなかなかよろしい。



んでもってついでに「青の時代」をパラパラめくっていたのだが、
主人公・誠のいとこで成績も悪くそのくせ学生運動にかぶれている
肉体は立派だが物事を考えない派(つまり三島の理想像)の
易というキャラについて、気になる描写を見つけた。
以下、引用。

誠は一瞬それが易であるかどうかを疑ったのであるが、
機嫌のよいときにまばたきをしきりにする癖で、それとわかった。

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石原慎太郎〜〜?!

どうなの! どうなのその元ネタは!
三島あーゆーのに好意を抱いちゃうの?
ひそかにああなりたいとか思ってたりしたの?
確かに頭の中は空っぽだけどさぁ!



ちょっと余計な発見でした……