年のはじめのバカ映画

元旦、せっかくだから映画でも見るか、という訳で
「茶々〜天涯の貴妃〜」を選択する。
すみれの花咲く園で男役を務めた人が、信長を思わせる西洋風の鎧姿を披露するという
トンデモ映画の匂いが気になっていたのだ。


結果からいうと、ある程度は大当たり。
肝心の鎧兜姿はそれほど目を奪われなかったが
松方弘樹の信長がダンビラ振り回す姿はまんまヤクザだし、
爆発!の煙の中から真田幸村が飛び出すし
そしてクライマックスには大阪城は金粉まき散らして爆発&崩壊!
東映の持てるノウハウ
ヤクザ映画+特撮+太秦時代劇をすべてつぎ込んだ映画だった。


もちろん金もかけている。
茶々役は鎧を始め豪華な打ち掛けに次々着替えるし、
伏見城を改修したという大阪城の景観は見応えがある。
そして何より、作品中で出てくる大阪城のミニチュアの素晴らしさ!
これは、秀吉が茶々を側室として迎え入れた夜に、
白い玉石を敷き詰めた中庭をめいっぱい使って
堀まで再現して作らせてあったという設定で
秀吉はこの模型の前で
「浅井、柴田と次々家を失った茶々のための城だ」とのたまうのだ。
……アレ見せられてこのセリフなら落ちるわ。
つーか、龍安寺の石庭と対照的なあのオブジェクトはまさに安土桃山バンザイ!
「利休」の秀吉が履いてた足甲が赤で裏金色の足袋以来の衝撃でした。


脇役も実においしい。
大奥をしきる高島礼子はラストいいカンジに乱れてくれるし、
浅井滅亡以降、茶々に従ってきた侍女……というほど格調もなく、
ねぇやと呼ぶには年が近すぎるし、小間使いと呼ぶには態度デカ杉、
まぁとにかく、庶民代表のようなポジションの「きく」役の人が
そらもういい味出しまくってくれる。
池田鉄洋とか大泉洋が好きな自分のハートど真ん中!
終盤に出てくる真田幸村東映らしいライダー系イケメンで
八面六臂の大活躍で家康にあと一歩という所まで迫るし(お約束)
千姫と秀頼は美しくもはかない若い恋人ズを演じて、
大阪城落城の前の夜は笛と琴の合奏などしてくれる。
(それを豊臣側が聞いて感じ入るという、それなんて平家物語
渡部篤良β(秀吉)も、中村獅童(家康)も自分の仕事を心得ていて
茶々に花を添えるための脇の演技に徹している。
個人的に渡部をいい役者だと思ったのはこれが初めてだった。
あと若い獅童が演じる家康だからこそ、
茶々に邪心ムラムラ=茶々まだまだ現役!な構図が成り立って
従来の教育ママゴンとは違う淀君像が描けたのだと思う。


こんだけ褒めちぎっておいて、映画として名作かというと
………………
………………
………………なんだよなぁ。
いろいろ詰め込みすぎたせいもあり、
そのために歴史はしょりすぎたせいもあり
(冬の陣と夏の陣がまとめて一つの役になっちまってるんだぜ?)
あとまぁ、わかっていたことではあるが
夕力うヅ力で培った演技のノウハウって、外の世界ではホント役に立たない。
「月のように無慈悲な女王」な茶々を演じようとしたのだろうし、
それを何とか推察することもできるが、結局一本調子なんだよなぁ。
月の裏側……クールな表面に隠れたた激情や寂しさや悲しさや可愛らしさや
とにかく、他の感情がほとんど垣間見えない。
見せているつもりなのだろうが「演技してます」ってカンジで
かえって「無慈悲な女が人並みの感情装ってる」的に見えてしまう。
歌舞伎の人は新劇スタイルでやる時は、それなりに馴染むことができるのに
どーしてなんだろうなぁ。女役の人だったらまた違うんかなぁ。


ま、そうした色々な不純物が混じった結果
焦点がボンヤリした映画になってしまった。
映像的にも役者的にも目を見張る点は少なくないので、
正直、惜しい。
いっそ全員架空の人物ということにして、
タランティーノあたりに没フィルム含めて全部渡して
好き放題に再編集させたらどうだろう。
声も吹き替えさせて……
(ヅ力独特の発声が聞こえないだけでも結構雰囲気変わる気もするし)




結論を一言で述べるなら、劇場で見るべき作品だ。
ラストの大阪城爆発は黒がはっきりした大画面で見なきゃダメ。
液晶TVとDVDでは、あの美しさは再現できない。
金券ショップでチケット買って劇場で見るべし!