打倒! チョコレート・パフェ

美少女戦士セーラームーン」シリーズのアニメ版が屑だと思うのには
(劇場版RとS,SSは許容範囲;あの頃の榎戸は良かった)
あげつらえばそりゃもう様々な理由がありますが
ベスト5に入るのが確実なのは、ネフライトとなるの例の約束のくだり。
+「チョコレート・パフェって知ってる? おいしいんだよ?」
ちゅどーん
+「すまない……チョコレート・パフェは一緒に食べられそうにない」
※詳細な言葉回しはかなり不正確です
つまり、敵方の悪のお兄さんが
心優しい純粋無垢な女子中生にココロひかれて改心しかけるが
わる〜い悪の親玉女はそれを許さなかったとかいうベタな展開において
「心優しい純粋無垢な女子中学生」の好むもの、すなわち
ありふれた日常の象徴として使われたのが
チョコレート・パフェなるアイテムであったということだ。


ファミレスでもファーストフードでもコンビニでも何処でもいい。
スイーツを扱ってそうな所に行って探してみてほしい。
あなたはチョコレート・パフェを見つけることができるだろうか?
答えは否、絶対に否だ。
この作品が放映された時、すでにそうだったが、
チョコレート・パフェなるシロモノは、
日本ではデパートの最上階の大型食堂と一緒に死滅したアイテム。
オヤジが出入りしそうな場末の喫茶店、見
本の蝋細工がホコリをかぶって変色したような店で
かろうじて扱っているようなメニューだ。
少なくとも麻布十番のなるちゃんが日常的に食べるものではない。


この致命的にダサいアイテムが出てきた時、
リアリティ以前の問題の、あまりにセンスのない選択に
怒りを通り越して寒気と脱力感すら覚えた。
そして世間が(といっても当時はネットもなく、アニメ雑誌と同人誌のみだが)
「あのエピソードはいい」「チョコレート・パフェは泣ける」と
大絶賛をしているのを目の当たりにして
絶望的な境地にまで追い込まれた記憶がある。
本当に誰もおかしいと思わなかったのだろうか?
感動のあまり実際にチョコレート・パフェを食べようと試みて
どこでも扱われていないことに気づきもしなかったのか?
(この悪夢は数年後、おじゃ魔女ドレミの主題歌でも甦るが
こっちは詳しくないので言及を避けておく)


どうしてこんなことをいまさら思い出したのかと言えば
僕はかぐや姫 (福武文庫)
松村栄子の「ぼくはかぐや姫」を読み返していて
やはり、この「チョコレート・パフェ」が出てきたからだ。
以下、出てきたくだり。
+それは珈琲の匂いであって断じてチョコレート・パフェであってはならない
ここにおいても、チョコレート・パフェは
エッジにあこがれもしない、よい子の少女たちの好みそうなものとして扱われている。
この小説が発表されたのは1990年だが、
記憶を掘り返すに、この時点でもうチョコレート・パフェは
かなり遺物の類に入っていなかっただろうか?
「ぼくはかぐや姫」は、少女らしさを押しつけられることを拒み、
自らを「僕」と呼ぶ少女の内面を描いた文芸作品だ。
こんな作品こそ、普遍的ゆえに幸福な少女の象徴を
もっとリアルな単語で表すべきであるはずなのに、
また、ここでもチョコレート・パフェ!
これは呪いか?
それとも自分はいつの間にか自分の宇宙とよく似ているが
デザート文化が30年ほど遅れた平行宇宙にでも紛れ込んでしまったのか?


ともかく、「少女の好むもの」のアイコンとして
も少しリアリティ&センスのあるものが選ばれるべきだと思う。
てか作り手側もちったぁ考えてほしい。